文サイトとボイスサイト兼用
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 オレはなんて、弱いのだろう。
殺すことを躊躇うぐらいならこの道を歩まなければ良かった。殺すことが怖いなら髪結いを続けていればよかった。そうだ、忍にならなくても、オレは生きていけるのに、親が忍だから何だって言うんだ。 「卑屈だな」 櫛で髪を梳く。兵助くんの髪は、癖はあるけど柔らかくて好きだ。 でも兵助くんは柔らかくなんてない。年上だからって贔屓はしてくれない。オレは兵助くんにとって"後輩"だから。 「決めたのはお前。家系からして素質はあるんだ。だから、今回の実戦も成功したんだろ」 でも、思い出すんだ。 さら、さら。 綺麗に梳いて、 ず、ぷしゃっ、どく、どく。 苦無で、首を、 「タカ丸」 「やだ、怖いよ兵助くん…なんであの人、あんなに、ち、でたの…」 服も顔も櫛も苦無も真っ赤になった。 人は泡を吹いていた。血塗れの、もう、思い出したくないのに脳が、記憶を、 「タカ丸、落ち着け、な」 兵助くんの言葉も耳に入らない。無我夢中で梳く。あの人の髪も少し癖があって、でも柔らかかった。 黒い、真っ黒い、髪。 (さらさら) でも厳しかった。一目見て、ああ、 (兵助くんに似てたから) たった一目、数刻。情が沸いた。 梳きながら、あの人が兵助くんに見えた。苦無を持つ手は震えて、(早くしないと、)あの人がオレの震えに感付いてゆっくり振り向く。長い睫毛、(兵助くんだ、)違う違う、これは、駄目だ、オレは(忍なんだっ…!) 「おい!!」 はっと顔を上げたら、兵助くんがオレの手を掴んでいた。恐る恐る自分の手に目をやると、あの血塗れの苦無があった。 「あ、あ、ちが、兵助くんじゃないよね、あのひと、女だった、し」 兵助くんの手を外して、オレは苦無を壁に投げ付ける。 いつの間にか、部屋には血の臭いが充満していた。 あの人の、血が、 「似てたのか」 こくりと頷く。 「馬鹿。卒業したら敵になるかもしれない奴に似てたからって、躊躇うなよ」 そう告げて、兵助くんは俺を抱き締めてくれた。充満してた血の臭いが、兵助くんの匂いに変わる。 オレはたまらなくなって、ちらりと見えた兵助くんの首に口付けた。 「うあっ…」 吸うと、その部分が鬱血して、赤くなる。 次は鎖骨に口付けたけど、兵助くんは拒まない。恋人でもないただの後輩に身体を開くなんて、娼婦みたいに、(そう、あの人は娼婦だったよ) 「なんで」 「は、っ…」 兵助くんが一つ嘲笑する。 それから耳元で囁かれた言葉に、俺は完全に理性を失った。 「お前だから…だよ」 黒髪 あの人は、きっと、二度目の恋だったんだ。 PR この記事にコメントする
|
カレンダー
プロフィール
HN:
もさこ
性別:
女性
職業:
寿司
趣味:
うた
自己紹介:
最近はショタ~オヤジまでいけます(どーん
永遠のマイブームはrkrnとaph(どーん BLゲーよりギャルゲー経験が多い変な女です
ブログ内検索
|