しとしと

雨は身体を溶かしてしまう。
ゆっくり、どろりと、
溶けてしまえばいいのだ、あの方が、
苦しいのなど御免だ。私はいつだって冷静でいたい。あぁ、けれども私は、どうしようもなく翻弄されている。愛などなくても子は成せるというのに愛はいつでもこの世に存在するのだ。忌々しい。溶けてしまえばいいのだ。
あの方はひとつを見ない。あの方はいくつもを見つめる。そうだ、私は特別などには成れぬのだ。所詮は玩具箱の中の選択肢のひとつ。たまたま選ばれるたびに期待が膨らむ。膨らんだ期待が破裂して絶望に代わる。…くりかえす。
雨が溶かしてしまえば良いのだ。期待も絶望もあの方も私もすべて。どろりと、ひとつの液体に。私でもあの方でもなく、雨に。透明な、空が生み出す液体に。

それでも寂しさは消えなくて憎たらしくて私は、貴方を、追い掛ける。