忍者ブログ
文サイトとボイスサイト兼用


×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

後で修正します…
ほぼ確認なしで書いたから修正箇所がありすぎる
ちなみに奥はなこのタイトルの曲がネタです
あの歌は感動したぜ…





「センパイ」
「今までありがとうな、タカ丸」
「…へいすけ、く、」

抱き締めようと手を伸ばしたのに、兵助くんはもういなかった。
緑の頭巾と、さよならってことばだけを残して。






あれからもう二年経った。
忍術学園を無事卒業しフリーの忍者として働き始めたオレは、幸いなことに仕事には困っていない。
入学したてのあの頃は、皆オレの物覚えの悪さに進級を心配してくれていたけど、身体に流れる忍の血のおかげか、五年の中盤になってからやっと皆に追い付けた。
最初は慣れなかった殺すことも、いつの間にか平気になってそんな自分が嫌だったのに(若かったんだ)忍者はそういうものだから。

(でも)
兵助くんには会えない。あれから、一度も。
いつでも懐にはあの頭巾が入っている。

さよならは別れのことば。
ようするにいきなり、忘れろと言ったのだ。兵助くんは。
「無理に決まってるじゃん…」
ばか、ばか、兵助くんのばか。
まだこんなにだいすきなのに。
あんたはオレの前に、いないんだ。
「兵助くんの、ばか…」



「タカ、まる?」
ふっと視界が暗くなる。
いや、違う、暗くなったんじゃない。誰かがオレの前に立ってるのか。
オレは咄嗟に後ろに飛び退く。
それからゆっくりと、さっき聞こえた言葉が脳に染み込んできた。

「兵助くんっ…?」

頭巾を口まで被っているので目しか判らない。
でも、長い睫毛と、くりっとしたまんまるの目は確かに、
「…懐かしいな、タカ丸」

濃紺の忍装束に身を包んで、(それはオレの知らない)
ゆっくりと頭巾を外したら、見慣れた長い黒髪が短かった、(オレの、知らない)

「髪、切っちゃったの?」
「あぁ。ちょっとな」

笑う姿は変わらないのに、兵助くんは前とは違った。オレとの思い出は、まるで全部なくなったかのように。
でも、たった一つだけオレがあった。
「それ…」
血の臭いがする。
「覚えてたか。お前からもらった苦無だよ」
オレが初めて人を殺した苦無だ。
震えるオレの手を握って、兵助くんはこの苦無をくれと言った。
お前の恐怖を俺がもらうって、そう言って、口付けをしたのは、


「まだ、オレの恐怖を持ってくれてるんだ」
嬉しかった。さよならを言われても、ただの友達になっても、兵助くんはオレのことを忘れてない。
きっとこれからも忘れないのかな、だといいな。オレはこんなにまだあんたが好きだから。 

でも、

(ともだち)

頭の中で反芻した。
ともだち、ともだち、ともだち、
それ以上では、なくなってしまった。

知らない服。
知らない髪。
知らない顔。
届かないことを今更実感させられた気分だった。兵助くんはもう、オレの腕の中には戻らないんだって。

「兵助」
情事にしか呼ばなかったことばに、ぴくりと反応した。
「オレは、何が悪かったの?」
じくじく。言っててこんなに辛いのは初めてだった。
兵助くんは何も言わない。ただじっと、オレを見てた。
「オレは、相応しくなかったの?」
「っ、違う!!」
そう叫んで、首を横に振った。
それから違う、違うと何度も呟いて、俯く。
兵助くんの手は、きつく握り締められていた。
「嫌いになったわけじゃ、ないんだよ…」

じく。

胸が痛い。
頭が痛い。
嬉しがればいい。ああ、嫌いになったんじゃないんだって。
なのに痛かった。苦しかった。
どうせなら嫌いって言えばいい。それなら諦めもつくのに、ともだちの位置はあまりに、辛い。

(ねえ兵助)
知ってるんでしょ、俺がまだあんたを好きだって。
(兵助)
呼ぶ度にこんなに苦しくなるんだよ。
ぎゅうって、心臓が、ああ、兵助が握り潰してくれればいいのに。

やり直せない。
兵助はやり直してくれない。
だって、兵助が別れを紡いだから。
何度も何度も口付けを交わした唇で、別れを紡いだから。
ちょっと期待してた。
また好きだって言ってくれることを、心のどこかで。

たとえ
(あんたから、違う奴のにおいがしても)



「善法寺センパイでしょ」
兵助くんがびく、と身を強張らせたのが判った。
「知ってた。学園にいた時から、ほんとはずっと。でも認めたくなかったから、忘れてたんだよ。…思い出しちゃったけど」
自嘲したら、兵助は唇を噛み締めた。
なに、後悔してるの。
知ってる。兵助はオレに情けをかけてたって。同情だった。
知ってる。兵助が卒業するあの日、善法寺センパイが迎えにきてたのを。
知ってた。けど、オレは兵助が幸せならいいんだよ?

(泣かない)
あんたの前で泣いたら、優しいからまた同情しちゃうでしょ。
だから少しだけ、目を逸らして。
少しだけでいいから、泣かせてよ。 
でもオレに話しかけていて。
あんたの声を、聞いてるだけならいいでしょう?





「ねぇ、兵助くん」 
精一杯の笑顔で、オレは、
「もう顔を見せないで。オレも顔を見せない。これが最後のお願いだから」
あんたを離したくなくなるから。
だから、もう二度と、二度と、

「好きだよ兵助くん。オレの中できっとずっと、あんたが一番だから」


それがオレがあんたに初めて紡いだ、別れのことば。




PR
この記事にコメントする
Name :
Comment :
 


material by アルフェッカ

忍者ブログ | [PR]
 
カレンダー
12 2025/01 02
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
最新記事
プロフィール
HN:
もさこ
性別:
女性
職業:
寿司
趣味:
うた
自己紹介:
最近はショタ~オヤジまでいけます(どーん
永遠のマイブームはrkrnとaph(どーん
BLゲーよりギャルゲー経験が多い変な女です
ブログ内検索